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大会展望3
ブラジルからの熱風、日本へ!
リオ五輪の熱闘を振り返る!
8月21日、4年に一度の大イベント、ブラジル・リオデジャネイロでのオリンピックが華やかに閉幕した。
オリンピック競技に加わって7回目のバドミントンは、男子ダブルスのフ・ハイファン(中国)がパートナーを変えて2連覇したのを除き、4種目で新チャンピオンが登場。ロンドン大会では、中国が全種目を制覇したが、リオ大会は4カ国で金メダルを分け合っている。
さらに日本にとってうれしいのは、初の金メダルがもたらされたこと。女子ダブルスの高橋礼華/松友美佐紀(日本ユニシス)が頂点に立ち、女子シングルスでも奥原希望(日本ユニシス)が銅メダルを獲得した。
ここでは、10日にわたって行われたバドミントンのリオ大会を振り返ってみよう。
日本の歴史が動いた
女子ダブルスで高橋&松友が金メダル!
第3ゲーム16-19から大逆転劇――。
デンマークのペダセン/リター・ユールとの女子ダブルス決勝で、高橋/松友が敗戦間近の瀬戸際から奇跡の5連続得点で優勝した。このシーンは、バドミントンファンならずとも心揺さぶられたことだろう。
ふたりの持ち味は、組んで10年だからこそのコンビネーション。優勝後の会見で高橋が「世界1位だと思う」と胸を張ったコンビネーションは、ピンチ時には鉄壁の守りとして、チャンス時には容赦ない攻撃の源として力を発揮した。
2人がもっとも絶妙の呼吸を見せたのは、1、2ゲームを分け合って迎えた3ゲームだ。中盤までネットインが重なり、「相手に流れがいっている」(高橋)と不安がよぎったが、高低や緩急を使い分け、チャンスが来るまで我慢してラリー。16―19という危機的な場面でも、「この勝負を楽しみたい」という松友の気持ちが、相手の虚を突く球を生みだし、勝利を呼び込んだ。
「バドミントン会場で君が代を聞ける日が来ると思ってなかった(笑)。ことごとく大きな大会で結果が出せなかったので、この五輪で結果が残せて本当によかった」(松友)
高橋&松友のスタートラインは
ヨネックスオープンジャパン!
じつは高橋/松友はリオ五輪へ出発前、ヨネックスオープンジャパンへの思いも打ち明けている。高橋の言葉はこうだ。
「高3で初めて出たとき、こんな大きい体育館で大勢の前で試合をしたことがなかったので、すごくうれしかった。(2014年の初優勝後は)自分たちのプレーの幅が広がり、自信もついた。今の自分があるのはヨネックスオープンジャパン優勝のおかげです」
そして松友――。
「子どもの頃からずっと出たい大会でした。選手になってからは、スーパーシリーズで優勝したくて、念願が叶ったのがヨネックスオープンジャパン。そこから成長したという思いがあり、今でも大事な大会です」
ふたりの話を統合すると、金メダルへの階段を駆け上がる契機がヨネックスオープンジャパンだったともいえる。
奥原希望は3位で表彰台へ
シングルス初のメダル!
一方、日本初のシングルスのメダルをもたらしたのは、21歳の奥原希望だ。
予選リーグを1位突破すると、決勝トーナメントで韓国のペ・ヨンジュにストレート勝ち。山口茜(再春館製薬所)との日本人対決になった準々決勝では、1ゲームをとられながらも、「私のほうがフィジカルが強い」と、わざと動かし攻撃させることで、相手の体力を消耗させ、ファイナルで後輩を突き放した。
ただ、インドのシンデュ・P.Vに敗れたあとの3位決定戦は、前回の金メダリスト、リ・シュェルイ(中国)が棄権しての銅メダル。
「目指してきた色でないので、喜んでいいか分からないけど、少しは喜んでいいのかな」
戸惑いはにじむが、2度のわたるヒザの手術を経て辿りついた境地は、間違いなく偉業だ。高橋/松友同様、来たるヨネックスオープンジャパンにかける思いも強く語る。
「昨年は3年ぶりに大会に出られて本当に幸せでした。この大会は、日本のファンの皆さんの前でプレーできる数少ない機会なので、今年も自分らしいプレーをしたいです」
女子シングルス決勝は
スペインVSインド!
リオ五輪の表彰台で、この奥原よりも高いところに上がったのが、世界選手権2連覇中のキャロリーナ・マリン(スペイン)と、インド2番手からの躍進だったシンデュ・P.Vだ。
マリンは、韓国のスン・ジヒュン、中国のリ・シュェルイを、シンデュは、中華台北のタイ・ツーイン、中国のワン・イーハン、日本の奥原と、格上を倒して勝ち上がった。
攻撃型同士の対戦は、五輪決勝の舞台にふさわしい迫力に満ちた。180センチのシンデュが鋭いスマッシュを見舞えば、マリンも獣のように何度もジャンプして素早く返球。一進一退の攻防となった。
結局、修羅場をより経験しているマリンが3ゲーム16―14から4連続得点に成功し、歓喜の時を迎えている。
「興奮している今の気持ちをどう表せはいいか分からない。これが現実だって信じなくちゃいけないわね」(マリン)
ちなみに決勝で使用されたシャトルの数は25。15個程度に終わることが多い女子シングルスで、2人の打ち合いがどれだけ激しかったかが推し量れるだろう。
またここ20年、女子シングルスで揺るがぬ強さを見せつけてきた中国が、メダルゼロに終わったのは、96年のアトランタ五輪以来のこと。スペイン、インド、日本が表彰台に立つ様子は時代の移り変わりを感じさせた。
男子シングルスはチェン・ロンが制覇
リー・チョンウェイは3大会連続銀メダル
バドミントン競技の最終日は、男子シングルスが行われ、27歳のチェン・ロン(中国)が初優勝を飾った。
188センチの長身から繰り出す角度あるショットは切れ味抜群で、3度目の五輪決勝になるリー・チョンウェイ(マレーシア)を2-0で下している。
「世界選手権で優勝したことはあるけど、やっぱり4年に一度のオリンピックはどこか違う。最高の気分だよ!」
一方、「僕は結局、金メダルを獲れなかった。この現実を受け入れなければならない」とうつむいたのは、リー・チョンウェイだ。
準決勝では、北京、ロンドンの2大会の決勝で苦杯を舐めさせられた林丹(中国)を激戦で破っていただけに失意は大きい。だが、持ち前の俊敏さを生かした鮮やかなスマッシュ&ネットは健在であることは証明できた。
また、22歳のヴィクター・アクセルセン(デンマーク)が銅メダルを手にし、華やかに存在感をアピールしている。アクセルセンは3位決定戦で林丹を破って、デンマークに20年ぶりにシングルスのメダルを捧げた。
「厳しい練習を重ねてきたんだから幸せさ!」
その最大の武器は、194センチという高さを生かした超絶の攻めと天与の勝気さ。以前は技術の荒さや勝ち急ぎによるミスが目立ったが、試合経験を重ねることでプレーが"熟成"されていった。若いだけに4年後をしっかり見つめ「東京では金メダルを獲りたい」と言いきっている。
今後、世界の主軸になっていくだろう若いアクセルセンらをベテランのリー・チョンウェイたちがどう迎え撃つか、ヨネックスオープンジャパンで見られたらおもしろい。
男子&混合ダブルスの金メダルは
中国とインドネシアの手に
男子ダブルスと混合ダブルスは、世界ランキング1、2位が相次いで敗れ、挑戦者が最後に笑う波乱の展開だった。
男子ダブルスでは、まず"死のゾーン"グループDで波乱は起こった。
台風の目になったのは日本の早川賢一/遠藤大由(日本ユニシス)。格上のチャイ・ビャオ/ホン・ウェイ(中国)を倒すと、出発前、「倒したい相手」に名前を上げていたインドネシアのヘンドラ・セティアワン/モハマド・アッサンを59分の死闘で退ける大金星を掴んだ。
ほかのグループでも世界ランク1位のイ・ヨンデ/ユー・ヨンソン、デンマークのマシアス・ボー/カルステン・モゲンセンといった功者たちが星を落とす波乱含みの展開だった。
決勝トーナメントに入っても、異様なムードは収まらない。ここまできらめきを放ってきた早川/遠藤が早川の腰痛で1回戦負け。いまいち乗り切れない予選2位のイ・ヨンデ/ユー・ヨンソンもついに脱落し、準々決勝は、誰が頂点に立ってもおかしくない雰囲気へ。
結局、優勝したのは世界ランキング4位の中国ペアだった。決勝では、予選で敗れたマレーシアのゴー・シェム/タン・ウィーキョンに反撃――。
北京2位、ロンドン優勝の中国のフ・ハイファンと、ロンドン混合複優勝のツァン・ナンという、ペア歴こそ浅いが、大舞台を経験しすぎている2人だった。
混合ダブルスもまた優勝したのは、追う立場にいたインドネシアのタントゥイ・アマド/リリアナ・ナッチルだ。
準決勝では、ロンドン大会の覇者で、日本の数野/栗原に圧勝した世界ランク1位のツァン・ナン/ツァオ・ユンレイ(中国)を撃破。決勝では世界ランク11位のチャン・ペンスン&ゴー・リューイン(マレーシア)をストレートで退けている。
「言葉にならないよ!」とアマド。
男子ダブルスと混合ダブルスは、追う者の強みを発揮した者が頂点に辿りついた。
【リオ五輪RESULTS】
■男子シングルス
【金】チェン・ロン(中国)
【銀】リー・チョンウェイ(マレーシア)※3大会連続銀メダル
【銅】ヴィクター・アクセルセン(デンマーク)
■女子シングルス
【金】キャロリーナ・マリン(スペイン)※アジア勢以外で初の女子種目【金】
【銀】シンドゥ・プサルラ(インド)
【銅】奥原希望(日本)※日本人初のシングルス種目メダル
■男子ダブルス
【金】フ・ハイファン&ツァン・ナン (中国)※フ選手は2連覇
【銀】ゴー・シェム&タン・ウィーキョン(マレーシア)
【銅】エリス・マーカス&クリス・ランリッジ (英国)
■女子ダブルス
【金】高橋礼華&松友美佐紀(日本)※日本バドミントン初の優勝
【銀】クリスティナ・ペダセン&カミラ・リター・ユール(デンマーク)
【銅】チョン・ギョンウン&シン・ソンチャン(韓国)
■混合ダブルス
【金】タントゥイ・アマド&リリアナ・ナッチル(インドネシア)
【銀】チャン・ペンスン&ゴー・リューイン(マレーシア)
【銅】ツァン・ナン&ツァオ・ユンレイ(中国)