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大会展望5
「会場ではこの選手のココを見て!」
元全日本コーチの米倉加奈子さんが海外のメダリストたちのプレーをご紹介
今年のヨネックスオープンジャパンはすごい!
8月に終了したリオ五輪で活躍した選手たちが数多く来日する。
しかし、初めてバドミントンを観戦する人のなかには、「この選手はどんなプレーをするのだろう?」とその魅力を知らない方も多いだろう。
ここでは、日本代表や全日本コーチを務めた米倉加奈子さんに日本にやってくるメダリストたちのプレースタイルなどを紹介していただく。
女子シングルス/リオ五輪優勝
キャロリナ・マリン(スペイン)
1993年6月15日生まれの23歳。8歳のときに競技をスタートし、14歳でスペイン代表としてのトレーニングを開始した。
バドミントンの競技人口がわずか7000人のスペインに生まれ、決して恵まれた環境にはいなかったが、2009年にヨーロッパU17選手権で優勝すると、その才能は一気に開花。14年には、世界選手権のタイトルを初めてスペインにもたらし、15年は2連覇した。
リオ五輪では優勝と、今、もっとも充実しているマリンの魅力とは。
「気持ちもプレースタイルも強気!」
――五輪優勝の強さの秘密は。
米倉「我慢できるようになりましたね。以前は勝ちたい気持ちが強すぎて、負けると叫んじゃうとか、とにかくやんちゃ娘だったんです。彼女のコーチが『ごめんね…』と謝りに来てたくらい(苦笑)。
でも、それだけの巨大なエネルギーを今はきちんと制御できている。本当に勝ちたくて、気持ちをどうコントロールすればいいか、真剣に考えたんじゃないでしょうか。すごい努力の跡を感じます」
――プレースタイルは。
米倉「攻撃型ではあるんですが、もともとネット前のプレーもうまかった。ただ、今、お話したように、以前は我慢しきれない部分があったので、どうしてもつなぎのプレーでミスが多かったんです。
ですが最近はキレることがなくなり、ミスなくネット前で柔らかいショットを打てるようになりました。だからいっそう攻撃できる場面を作れるようになったんです」
――魅力的なショットは。
米倉「サウスポーからのスマッシュ! 破壊力抜群です。いったん攻めにハマったら、誰にも止められない勢いがある(笑)。
クリアー(*)にも威力があるんですよ。マリンの球は重くて、ズシッと来るので対戦相手は徐々に体力を奪われていく。相手を追い込んでいく様子もチェックしてみてください」
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*クリアー:オーバーハンドで遠くに打つショット
■女子シングルス/リオ五輪準優勝
P.V.シンドゥー(インド)
1995年7月5日生まれの21歳。リオ五輪では、準々決勝で日本の奥原希望(日本ユニシス)をとんでもない破壊力で寄せ付けず、その存在を知らしめた。
そんな攻撃型がバドミントンを始めたのは、8歳のとき。バレーボールのスター選手だった父と同じ道に進む選択肢もあった。しかし、01年にプレラ・ゴピチャンドが全英オープンで優勝した姿が心に刻まれ、バドミントンの道に進んだ。
そんな思いもあり、選手としての練習場所に選んだのは"ゴピチャンドアカデミー"。この施設での強化システムで育ち、オリンピック前には、12時間も練習やトレーニングに費やす日もあったという。
オリンピックでの銀メダルは、そんなシンドゥーの努力のたまものだ。米倉さんから見たシンドゥーの魅力とは。
「キレ味鋭い攻撃型。多彩な攻めに注目して」
――リオ五輪の戦いから受けた印象は。
米倉「200%の力を出していましたね。普段はもうちょっとミスがあるというか…。身長が約180センチと高いせいか、体のバランスがいいとは言えずミスが多かったんです。でも、オリンピックではハマッてましたね」
――魅力的なショットは。
米倉「マリンが重い球を持ち味にしているのに対し、シンドゥーはキレ味がいい。オーバーハンドから、緩急つけた球を多彩に打ってきます。
たとえば緩急をつけるというと、一般の方はスマッシュとドロップ(*)というような、スピードに落差が大きい組合せを思い浮かべると思います。
ですがトップ選手は、カット(*)やカットスマッシュ(*)を組み合わせたりと、緩急のつけ方も繊細でバリエーションが豊富です。
シンドゥーは、球のスピードを微妙に変化させるのがとても上手。そんなところをチェックしてみてはいかがでしょう」
――シンドゥーの印象は。
米倉「彼女には、集中力の高さを感じます。さらに試合を重ねるごとにその集中力は増していく。ビッグイベントをモノにできる強い気持ちもあるんでしょうね」
――ここを見て! という注目点があれば。
米倉「オリンピック決勝の再現になるであろうマリンとの準々決勝はぜひ多くの方に見ていただきたいです。
余談ですが、マリンとシンドゥーはどちらも大柄ですが、体つきがしっかりしているマリンは隙なく見える一方、細身のシンドゥーはコートが広く見えてしまう。
でも、それは見えてるだけで、実は手足が長いからコートを広くカバーできている。シンドゥーは隙があるように見えて、本当はないという意外性も楽しんでみてください(笑)」
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*ドロップ:オーバーハンドからシャトルのコルクにラケットを当てて、ネット前に落とすショット
*カット:オーバーハンドからシャトルの側面を意図的にこするように打球して、ネット前に落とすショット
*カットスマッシュ:カットとスマッシュの間のショット
■男子シングルス/リオ五輪準優勝
リー・チョンウェイ(マレーシア)
1982年10月21日生まれで、来月、34歳になる。私生活では、2人の子供の父親だ。
そのキャリアは長い。2004年にマレーシアオープンで初優勝して以来、タイトル獲得を重ねてきた。
2008年途中から2012年6月まで、約4年間、世界ランキング1位に就き続け、ヨネックスオープンジャパンでは5回優勝を果たした。その実績は、すでにレジェンドだといえる。
しかし、そんな彼がどうしても手に入れられないのがオリンピックと世界選手権の金メダル。リオ五輪でも3回連続銀メダルに終わった。
リオ五輪後、「東京オリンピックに出ることはないだろう」と語ったものの、現役続行を表明し、来年の世界選手権でのタイトルを見据える。
いまなお競技にこだわる彼の精神力と、現役生活を続けられる強さは何なのか。
「五輪で3大会連続の銀メダル。
それでも現役を続ける不屈の魂を見て」
――リオ五輪では銀メダル。彼の気持ちを推し量ると。
米倉「オリンピックで3回続けて銀メダル。どれだけがっくりきただろうと思います。当然、どうして獲れないのか、考えてしまうときもあっただろうなと。彼のように世代が代わっても勝ち続けている選手に対し敬意しかない私には、異次元の悩みですけど(苦笑)」
――来月、34歳。ケガをしやすかったり、疲労が抜けにくい年齢です。
米倉「彼が30歳くらいの頃でしょうか。『もう年だからねー』と軽口を叩いていたことがあるんです。当時から体の変化を感じ始めていたのかもしれませんね。
ただ年齢を重ねると、スピードやパワーが落ちていくのは仕方ないこと。私自身を振り返ると、相手の動きのスピードをコントロールできるように、シャトルスピードや重さを変化させることを心がけていました。
――リー・チョンウェイも戦い方が変わっているか。
米倉「以前であれば、試合の間、最大限の速さで動きっぱなしでも大丈夫だったんでしょうが、いまはどこでマックスの力を出すか、配分しながらやっているのではないでしょうか。
だからこそ、チョンウェイが編み出す相手を崩すきっかけが気になります。今までとは違う、駆け引きのうまさ等は上がっているはず。戦い方のバリエーションは増え、スキの突き方もうまくなっているでしょう。 彼のフィジカル面ではなく、経験値で相手を翻弄する戦い方、進化している部分に注目してほしいですね」
――リー・チョンウェイのすごさとは。
「彼は来年の世界選手権を見据えて、現役を続行することにしたそうですね。
これだけの悔しさを味わって諦めてもいいはずなのに、彼はまだ進化を求めて勝ち方を模索している。その挑戦の心に勇気づけられます。そんなリー・チョンウェイの姿勢をぜひ見てください」
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■男子シングルス/リオ五輪3位
ビクター・アクセルセン(デンマーク)
1994年1月4日生まれの22歳。2008年の北京五輪では、欧州選手によるメダルがゼロだったように、数年前までバドミントン界には、アジアの旋風が吹き荒れていた。
とくに男子シングルスでは、アジア優勢が顕著だったが、いま、アクセルセンが風向きを変えようとしている。リオ五輪では、96年のアトランタ五輪でのホイヤーラーセンが獲得した金メダル以来となる銅メダルを手に入れた。
6歳のとき、初めてラケットを握り、8歳で競技の道に入った194センチは、高校卒業後にプロ宣言もした。伸び盛りの22歳の魅力とは。
「攻撃するまでのレシーブ力を見てください!」
――プレースタイルは。
米倉「攻撃型と言われることが多いですね。ただ私からすると、彼のレシーブの巧さに目がいってしまいます。攻めに持っていくまでの作り方が上手なんです。
たとえば、彼は長い手足を使って、シャトルをスッととってしまう。さらにラケットとシャトルをタイミングよく合わせ、ラケットをコンパクトに振ってコントロールして返球できる。ラケットワークが非常に巧みです」
――魅力的なショットは。
米倉「ぜひロブ(*)を見てください。彼は1回、ラケットを振り出したらそのまま打たずに、もう一度、振り直してロブを打つことがあるんです。
1回目にラケットを振り出したとき、相手がネット前に突っ込んでいるのが見えたら、すかさず、振り直してロブに切り替えている。すると相手は対応が遅れてしまうんです。
往年の名選手であるピーター・ゲードさんもこの技をよく使っていました。彼から学んだのか、もしくはデンマーク選手は2回ラケットを振る練習をしているのかもしれませんね」
――ピーター・ゲードさんとの違いは。
米倉「ビクターのほうが球数が多い印象ですね。ゲードさんがわりと一定のスピードで動いたり、オーソドックスなプレースタイルなのに対し、ビクターは引出しが多い。ただ、これに関しては時代の違いもあるかもしれませんが」
――――ここを見て! と言いたい彼の魅力は。
米倉「好青年です! お国柄でしょうか。他のデンマーク選手同様、若いのに紳士的な雰囲気です。以前、彼がアップしているときに、ブログ用に写真を撮らせてほしいとお願いしたら、背筋をスッと伸ばして応じてくれました。中国語を勉強しているそうですが、何事にも向上心があるのでしょうね」
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*ロブ:シャトルをアンダーハンドで拾い、コート奥に返すショット
■女子ダブルス/リオ五輪準優勝
カミラ・リタ・ユール
クリスティナ・ぺダセン(デンマーク)
左利きのリタ・ユールが183センチ、ペダーセンが178センチと、女子ダブルス界でもっとも大きなペアだ。2人がコートで並ぶと、対戦相手は威圧感を感じ、サービスをどこに打ったらよいか、戸惑うという。
リオ五輪では、女子ダブルスの銀メダルを手に入れその名を広めたが、33歳と30歳というベテランペアは、混合ダブルスでのキャリアのほうがきらびやかだ。
リタ・ユールは世界選手権の金メダルを、ペダーセンはロンドン五輪の銅メダルと、数々の栄光を手にしてきている。そんなふたりの女子ダブルスはどんなスタイルなのか。
「左&右利きの強さをチェックして」
――プレースタイルは。
米倉「右利きのペダーセンが前衛でゲームを作って、左利きのリタ・ユールに決めさせるのが勝ちパターンです。
ふたりに追い込まれていくと、対戦相手はつい右利きのペアと戦っているようにプレーしてしまいがち。それがデンマークペアにとってチャンス球になる。リタ・ユールが『待ってました!』とばかりに決める場面をよく見かけますね(笑)」
――魅力的なショットは。
米倉「ショットというより、サービスをレシーブするときなどのタッチの速さを見てください。ふたりは腕が長いので驚くほど早くシャトルに手が届く。
そのぶん返球が早いし、どんな球で返すか、球種の選択肢が多いので、対戦相手は苦労していますね」
――五輪で2人が銀メダルと躍進した理由は。
米倉「2人は攻撃力があるので、以前なら攻めたい気持ちが強かったと思うんです。でも最近は無理に攻撃しない。本当に決められるまで、落ち着いてラリーして、チャンスが来るまで待てるから、確実に得点できるようになったのかもしれません」
――ここを見て! と言いたいふたりの魅力は。
米倉「リオ五輪決勝を争った高橋/松友ペアも組んで長いですが、ふたりも10年くらい経っていますね。そのせいか、互いの役割をよく分かっている感じがします。
性格も正反対で、ペダーセンが精神的に落ち着いていて、リタ・ユールが豪快な雰囲気。キーマンはコート全体をよく見渡しているペダーセンで、相手に流れがいってしまっても試合を立て直すがとても上手です。いつもニコニコしていて、明るいふたりですね」
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